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The Boy in the Dress (TV) ドレスを着た少年

イギリス映画 (2014)

題名から想像すると、ゲイもしくはトランスジェンダーの少年の物語かと思ってしまうが、このTV映画は完全なコメディ。イギリスで活躍するコメディアンのデヴィッド・ウォリアムスが2008年に出版した同名原作(処女作)を映画化したもの。主人公の12歳のデニスは、5年前に母が家を出て行ってから寂しい思いをしてきた〔映画では、家出してからもっと日が浅い〕。彼は、学校のサッカー部のスタープレイヤーだったが、ある日、行きつけの何でも屋で女性向けファッション雑誌の表紙の女性に母を感じて購入する。それがきっけとなり、学校で一番 “カッコいい” と言われている女の子と親しくなり、彼女の部屋に行った時、手製のワンピースを着せられる。そして、大切な母の写真を父に没収された時、頭の中が弾け、翌日、その派手なワンピースで学校に行く。その後は、全くのコメディ。起こりそうにないシチュエーションだが、登場人物がそれぞれユニークで笑わせる。生徒には厳しい服装制限を押し付け、女装したデニスを退学にした校長が、実は女装愛好家だったり、サッカー部のコーチが、試合中何が起きているかも分からないくらい “サッカー音痴” だったり、デニスの父が巨大漢で、巨大なトレーラーヘッドを自宅前に駐車しているとか、突拍子もないフランス語の女性教師とか… ラストの、全員女装した部員による0-4の逆転劇も、全くあり得ない話なのに笑わせる。TV映画と言っても、BBC製作なので、ハリウッドの大作映画を別とすれば、アメリカのインディペンデント映画と大差はない。

ロンドンの西郊に住むデニスの家では、半年ほど前、父に愛想をつかした母が家を出て行ってしまって以来、家庭崩壊が起きている。父は、裏切り者の母の写真を全部燃やしてしまい、奇跡的に熱風で飛ばされた半焼けの写真1枚をデニスは大切に持っている。兄は無神経で何も影響がないが、張本人の父は、“家閉症” になり、何もしないでボーっとしていることが多い。そんなデニスは、学校のサッカー部のベストプレイヤーだが、年上のキャプテンに嫉妬されている。もう1つ “変わった” ところは、母がいつもきれいなドレスを着ていたこともあり、ファッションに興味があること。そこで、ある日、行きつけの雑貨店で、棚にあった『ヴォーグ』誌に惹きつけられ、買ってしまう。デニスは、それを学校に持って行くが、テニスボールでサッカーの練習をしていて、ボールを校長室に飛び込ませてしまったことで、居残りの罰を受ける。その時、隣に座ったのが、学校一ファッショナブルな上級の女子生徒リサ。彼女は、これまでデニスの存在など気にも留めていなかったが、鞄の中に『ヴォーグ』を見つけると、服飾に関するセンスに感心して友達になる。土曜にリサの部屋に呼ばれたデニスは、そこでリサお手製のドレスを見せられる。リサは、その日、一晩かけて、ドレスをデニス向きにより派手にし、翌日曜にデニスを呼びに行く。そこで、デニスは生まれて初めてドレスを着る。そして、どのくらい “女の子として通用するか” を確かめようと、リサの用意した変装用具をつけ、行きつけの店に2人で行く。結果は大成功で、全く疑われなかった。2人にとって、それは単なる “遊び” で、それ以上続ける気などなかったが、事態は大きく変わる。サッカーの準決勝に勝って自宅に戻った時、無神経な兄が、デニスの隠し持っていた母の写真の存在を父に話してしまい、デニスは宝物の写真を取り上げられる。頭にきたデニスは、何でもいいからクレイジーなことがしたいとリサに訴え、結果、デニスはドレス姿で当校する。うまく行きそうに見えた この大胆な冒険は、フランス語の授業で破綻に直面して教師の心を傷付け、そのあと、食堂で正体が完全にバレ、今度は自分自身が大きく傷付く。校長から退学処分を受けたのだ。サッカー部はデニスなしに、決勝を戦わなくてはならない。結果は、惨憺たるもので、前半が0-4。校長は、頑としてデニスの出場を拒否する。そこで、リサはその他の部員と相談し、全員がドレスを着た上で、デニスを入れて後半戦に臨み、5-4で逆転優勝する。それでも、デニスの退学を取り消さない校長の気を変えようと、日曜の朝しか現れないとされる “校長の妹” に直訴しようとしたら…

主役のデニスを演じるビリー・ケネディ(Billy Kennedy)は、年齢不詳だが、TV放映された月の記事に13歳と書かれていたので、それを信じるしかない。映画は、端役を別として、出演はこれ1本のみ。ドレスを着る前は、これが女装の合う顔かと思ってしまうが、カツラを被り、眼鏡をはめると、“うるさ型の女性” を小型にしたようで、結構それらしく見えるから不思議だ。映画の中でサッカーのシーンが良く出てくるが、オーディションで一番重視されたのはサッカーの技量だったとか。

あらすじ

映画の冒頭、12歳のデニスが家から出てきて、玄関前にドカンと停められた父のトレーラーヘッドの脇で、独白。「僕はデニス。普通の町の、普通の通りの、普通の家に住んでる。でも、僕は、ちょっと変わってる」(1枚目の写真)。場面はデニスの学校に移る。正門を入った所では、オールド・ミスのプライスが立って、生徒の服装を厳しくチェックしている。今日は、ホーソーン校長が一緒に監視している。そこに、リサが現れる(2枚目の写真)。プライスに「連続違反者のお出ましね」と言われると、リサは「スカートの丈を測られます?」と校長にメジャーを見せる。デニスは、既に教室に入り、窓からそれを見ている。「リサ・ジェイムズは学校一クールな生徒なんだ。いつだって、スタイルをばっちし決めてる」。外を見ていたデニスに、フランス語の教師が、「ドゥニ」と呼びかける〔Dennisのフランス語での発音〕。「店で何を買いますか?」。黒板には、「Boulangerie(パン屋)」と書かれている。デニスは一瞬迷い、自信なげに「車?」と答える。教師はケラケラ笑い、「ここはパン屋ですよ! パン屋で車なんか売るもんですか!」とたしなめる。そして、手を上げた女生徒を当てる。「Du pain(パン)」。解放されたデニスは、また机に片肘をつき、窓の外を眺める。「先生は、僕がいつも空想にふけってるってブツクサ言うんだ」(3枚目の写真)。
  
  
  

学校が終わる。「土曜は最高だ。だって、サッカーがあるだろ」。デニスは、部員のダーヴェッシュの車に乗り込む。そして、運転している彼の母に、「やあ、ジャスプリート、それ新しいドゥパータ〔インドのスカーフ〕?」と訊く(1枚目の写真)。ジャスプリートは、「そうよ、ありがとうデニス。いつも、よく気付くのね。息子にも見習って欲しいわ」と喜ぶ。ジャスプリート:「恥ずかしいからやめろよ」。そして、サッカーのシーン。「僕は、サッカーが得意」(2枚目の写真)「僕にはそれしかない〔The one thing that's mine〕。だけど、どこかピッタシこない。パパが、もう試合を見に来ないから。ずっと、いっぱいいっぱいなんだ〔he has got a lot on his plate〕」。ここまでが、オープニングクレッジット。
  
  

夜になり、デニスと2歳年上の兄ジョンがソファに座ってTVを見ていると、巨漢の父が皿を持ってきて、2人に渡す。「ソーセージを ちと焼き過ぎた」。実は、真っ黒で炭になっている。「豆はコンロに入れるのを忘れちまったが、すぐ溶ける」。冷凍のグリーンピースは、20-30個が固まって凍ったまま。「ウチじゃ、いろいろ大変なんだ」(1枚目の写真、矢印)〔夕食は、これだけ〕。そして、過去の回想が始まる。「ママがいた頃は良かった」。ベッドで横になったデニスが、母の写真を見ている。「ママがいると、いつ何が起きてもおかしくない。ある日、それが起きた。ママは出て行った。そのあと、パパは、ママの写真を、僕らが持ってたものまで全部焼いちゃった」(2枚目の写真、矢印は燃える母の写真)。その写真が風にあおられて飛び、それをデニスがキャッチする(3枚目の写真、矢印は母の写真)。「だけど、何とか1枚助けられた」。それを見つけた兄は、「何してる?」と言うが、デニスは、口に指を当て。「しーっ」と内緒にするよう頼む。再びベッドの中。「僕は、魔法の世界にでも逃げ込みたいと思うようになってた。ところが、それが、思いもかけない場所で見つかった」。
  
  
  

それは、デニス行きつけの「ラジのニュース」という店。店の入口には、「一度に入っていい子供は17人まで」という貼り紙がしてある。デニスが雑誌の棚にあるサッカーの『MATCH!』という雑誌を見ていると、後ろから、「デニス」と、囁くように誘う女性の声が聞こえ、赤い光が放たれる(1枚目の写真)。そこにあったのは『ヴォーグ』誌。デニスは、思わず『ヴォーグ』を手に取って中を開くと、そのページに映っていた女性の口が動き、「男の子だって『ヴォーグ』を好きになっていいのよ」と言う(2枚目の写真)。その時、店主の咳払いがする。デニスが振り向くと、「33秒。時間オーバーだ」と言う〔この店では、いろいろ規制がある〕。デニスは、『ヴォーグ』の上に『MATCH!』を重ねて店主に渡す。店主は、『ヴォーグ』に気付くと、「『ヴォーグ』だと! ファッショニスタ〔ファッションに気を配るオシャレ上手〕のバイブルじゃないか! 12歳の男の子が買うのは変だぞ」と言う。横に、口うるさそうなおばさんが寄ってきたので、デニスは、伯母さんへのクリスマス・プレゼントだと言って誤魔化すが(3枚目の写真)、お陰で、商売熱心な店主から、プレゼント用のカードと、包装紙、リボンまで買わされることに。
  
  
  

家に戻ったデニスは、さっそく『ヴォーグ』に見入る(1枚目の写真)。すると、空想の世界が開け、先ほどの女性と一緒にスタジオで踊る(2枚目の写真)。楽しい夢は、兄の「デニス」と呼ぶ声で破られる。デニスは、急いで『ヴォーグ』をベッドの下に隠すと、兄が、部屋に入って来て「何してる?」と訊く〔2人は相部屋〕。「何も。ただ… 考えてた」。「何を?」。「僕ら、小さい頃、海賊やダーレク〔BBCのTVドラマ『ドクター・フー』に登場する地球外生命体〕の格好してみたよね」。「ああ」。「懐かしくない?」。「いいや、他にもっとすることがある」。「酒屋〔offy〕の前でウロウロするとか?」。「ウロウロするのは、1ポンド・ショップ〔≒100円ショップ〕の前だ」。夜になって、兄がいびきをかき出すと、デニスは、毛布をかぶり、懐中電灯を点けて母の写真に見入る。すると、母の開いた最後のパーティの一コマが頭を過ぎる。そして、最後の客を送り出したあとの2人の口論。母:「パーティじゃないの!」。父:「俺はもう18じゃない!」。「なぜ、パーティに賛成したの?」。「パーティの間じゅう、俺を無視したな!」(3枚目の写真、母は大好きな黄色のドレスを着ている)。デニスは悲しくなる。
  
  
  

学校で。サッカー部のキャプテンが、ガールフレンドと一緒に、取り巻きの前で、嘘の自慢をしている。曰く… 自分はチームで一番ゴール数が多く、ペナルティ・キックもすべて成功。すると、生徒達の一部が、キャプテンの後ろで行われていることに注目し、キャプテンも何事かと振り向く。そこでは、チームの中で抜群に上手なデニスが、テニスボールを使ってサッカーの足技の練習をしている。その頃、校長室では、リサが座らされ、「なぜ当校には制服があると思うんだね、ミス・ジェイムズ?」と訊かれる。「ナイロン工場を倒産させないためですか?」。この不真面目な答えは無視し、校長は「規律を保つためだ。そして、規律がなければ…」と言いかけ、同席していたプライスが、「混沌が起きるでしょ」と口を挟む。校長は、「プライスさん、最後まで言わせてくれたまえ」と不満を表明する。危機感を覚えたキャプテンは、デニスの前まで行くと「見せびらかしてるのか?」と批判する。「練習してるだけ」。「なら、どのくらい上手くなったか見せてみろ」と言い、ベンチの背の上に置いてある缶に当ててみろと言う。デニスは、テニスボールを軽く投げ上げると、落ちてきたところを右足で蹴る(1枚目の写真、矢印はテニスボール)。ボールは缶のすぐ下の背の “木口” の部分に当たり、飛んでいった先で2度跳ね返され、校長室の開いた窓から中に入り、一度バウンドしてから、校長の目の前に置いてあった紅茶のカップの中に落ちる(2枚目の写真、矢印はテニスボール)。飛び散った紅茶が校長の服にかかる。次の場面は、懲罰室。デニスとリサは隣り合った席に座っている。リサは、小声で「何をしたの?」と尋ねる。「蹴ったボールが校長室に入っちゃって」。「あれ、あんただったの? すごい。何て名前?」。「デニス・シムズ」。「ジョンの弟?」〔リサは兄と同年〕。「そうだよ」。「リサよ」。「知ってるよ。レジェンドだもん。学校一クールな女の子だ。着こなしが素敵だよ。毎日ひねりが効かせてあって…」と夢中で話し、ハタと気付いて、「心配しないで、ハマってるんじゃないから」と弁解する。「そんなこと思ってないわ」。鉛筆を折ってしまったデニスが、机の脇に置いた鞄を開けて捜していると、リサは、『ヴォーグ』に気付き、さっと取り上げる(3枚目の写真)。デニスは、恥ずかしいので、「僕のじゃない。どうして入ったんだろ」と言うが、リサは、「学校でこれ読んでるの私だけかと思ってた」と感心することしきり。
  
  
  

2人は、懲罰が終わると、仲良く一緒に帰る。「どっかのページに、カーディガン1着300ポンド〔2014年前期の1ポンドは170円なので、300ポンドは5万円〕ってあったけど、間違いだよね」。「いっぱい質問するのね、ホビット君」。そこはリサの家の前だった。「ここ、私の家よ。じゃあね、バイ」。リサは、すたすたとドアまで歩いて行き、デニスは、すげないなと がっかりするが、リサは、中に入りながら、「土曜に来たら?」と声をかける。「何のため?」。「覚えるため… 何もかも」。その思わせぶりな言い方に、デニスは心をときめかす(3枚目の写真)。土曜になり、デニスは嬉々として家を出て行く。後ろから、兄が窓から、「どこに行くんだ?」と訊くので、「リサ・ジェイムズのトコ」と答えると、兄は本気にせず、「そうか、なら、俺はリアナとデートだ」と、茶化して本気にしない。リサの家に行くと、「好きな飲み物は〔Fancy a drink〕?」と訊かれたので、「もちろん〔Why not〕、シャンパン・カクテルさ」と乗りで大口を叩き(2枚目の写真)、真面目に「未成年よ」と言われ、「アン・ボンゴ〔ジュースの会社名〕」と年齢相当の選択。そのあと、デニスはリサの部屋に連れていかれる。それは、ものすごくカラフルな部屋だった(3枚目の写真)。
  
  
  

デニスは、「ママは、ドレスが大好きだった。いつもきれいだった」と話す。過去形だったので、リサは、「どうかしたの?」と尋ねる。「屋根ふき会社のオーナーと駆け落ちさ。お祖母ちゃんの話じゃ、もう赤ちゃんができてるって」。「残念ね」。「ホント。今や、家の中は男だけ。うんざりするような灰色なんだ」。「いい物見せてあげようか〔Can I show you something〕?」。リサが取り出したのは、黄色の花のワンピース。「すごい! 誰が作ったの?」。「私よ。学校でやりたいのに、校長はファッションなんか お呼びじゃない。知識もないのに、どうやったらデザイナーになれるの?」。「でも、きれいだよ」。それを聞いたリサは、「ひょっとして、着てみたら」とドレスをデニスの体に当てるが、彼は、断固拒否(1枚目の写真)。「ねえ、試してみなさいよ」。「ヤだよ」。「反対するのは誰?」。「そうだな、パパに兄に校長、それにサッカーの連中… そうだ、僕の知ってる人全員」。「私は違う。ルールなんか作るべきじゃない。誰でも、好きなものを着ていいの」(2枚目の写真)。「そうかもしれないけど、ドレスを着た男の子なんて、前代未聞じゃない?」。翌日、デニスの家では、クリスマスが近づいているのに、準備が全くできていない〔この挿話から、母の家出は、1回前のクリスマス以降に起きたことは確実。ただし、家出の相手との間に赤ちゃんができているので、数週間ではない〕。兄が、TVを見ている父に、「一緒にツリーを作ろうよ」と声をかけても(3枚目の写真、矢印はツリー飾りの入った箱)、「いつも、お前たちのママと一緒に作ってた」と言い、「後にしよう」と断られる。デニスは話題を変え、「どうして、準決勝に来ないの?」と訊くが、それも、ママがいないから。父は母の家出を未だに “一生の重荷” として背負い、家じゅうを暗くしている。
  
  
  

その時、ドアにノックの音がする。兄がドアを開けると、そこには憧れのリサが。兄は、弟が当り前のようにリサと出かけるのを見て、悔しいやら羨ましいやら。リサは、デニスに昨日のドレスの改良バージョンを見せる。「気に入った?」。「最高だね」。「一晩中、かかったのよ。あとは、あんたに合わせて ちょっと手直しするだけ。着てくれる?」。「ドレスを着るの?」。「そうよ。本気でイヤじゃないんでしょ?」。デニスは渡されたドレスを着て、更衣室から出てくる。そして、全身鏡の前に立つと笑い出す。リサは、すぐ横に来て、「なぜ、笑うの?」と訊く。そして、一緒に鏡を見て、「信じられない」と感嘆する(1枚目の写真)。「ぴったり合ってる?」。「完璧」。「ところで、誰のために作ったの?」。「あんた」。「何だって?」。「私だってバカじゃない。あんたの心には、着たてみたいという願望がある。それに、立派に女の子として通るわよ。ちょっとした細工はいるけど」。「ホントにそう思う?」。「今すぐ、外に出てみる?」。「どこへ?」。「さあ。通りを歩くとか。町に行くとか」。「ラジの店はどうかな?」。「絶対バレないわ。誓ってもいい」。そして、2人は外出する。デニスは、①おかっぱのカツラ、②女性らしいメガネ、③ドレスと同じ柄の髪飾り、④イヤリング、を付けている(2枚目の写真)。「怖いよ」。「自信をもって。世界は、あんたにとってのキャットウォーク〔ファッションショーの際にモデルが歩く長いステージ〕なのよ」。店に入る直前、デニスは、行く先を自分で選んだくせに、「これマズいよ。ラジは僕を知ってる」と反対するが、リサは、「彼が知ってるのはデニス。デニースには会ったことがない」と、暗示をかける。店に入ったリサは、デニスを連れて真っ直ぐ店主の前へ。リサは、フランスからの交換留学生と紹介し、デニスは、たどたどしいフランス語で「Bonjour(ボンジュール)」と挨拶する(3枚目の写真)。「Je am… Denise(私、デニースです)」〔「Je suis Denise」と言うべきところ、フランス語が苦手なので、英語とミックスした/それに、Deniseの発音は、“e” は “エ” ではなく “無音” に、“s” は1つなので “ス” ではなく “ズ” になるので、ドゥニーズにならないといけない〕。デニス以上にフランス語を知らない店主は、「Willkommen(よく来たな)」とドイツ語で言い、「この店は、世界的に有名なんだ」と英語で付け加える。「聞いたことあるだろ?」。「Non, Monsieur Raj(ノン、ムッシュー・ラジ)」.「名前を知ってるんか?」。危うくバレるトコだが、店主は、家族に送る葉書や、そこに絵を描くカラーペンを売り付けるのに熱心で気付かない。最後は、デニスが、うっかり、「バイ」と言い、慌てて、「Au revoir(さようなら)」と言い直す。ただし、店主は、今度はイタリア語で、「Ciao(バイ)」と言うので、何を言ってもバレないかも。
  
  
  

店を出てしばらく2人で歩いていると、ジャスプリートがリサに気付き、車を停めて、「デニスはどこ?」と尋ねる。先にデニスを迎えに家まで行き、リサと一緒に出かけたと聞いたからだ。デニスは、一番の友達のダーヴェッシュが乗っているので、絶対バレると思い、背を向ける。「準決勝だった!」。今さら、気付いても遅い。リサは、「デニスですか? 彼はこう言ってました…」(1枚目の写真)「もし、私があなたに会ったら、今、会ってますけど… 5分で家に戻るって」。リサは、直ちにデニスを家に連れ戻し、服装を元に戻す。そして、デニスは、直線の裏道を全力で駆け抜ける(2枚目の写真)。そして、裏口から家に入り、ジャスプリートが玄関に向かうと、ジャスト間に合って、玄関から出てくる。後部座席に乗り込むと、ダーヴェッシュが「どこにいたんだ?」と訊くので、「ウエイトトレーニング」と答えるが、左耳にイヤリングが残っているのに気付き(3枚目の写真、矢印)、慌てて隠す。
  
  
  

デニスとダーヴェッシュは、サッカー部室に集合する。準決勝の試合を前に、コーチを務める体育教師のノリスが “試合前の言葉” をかける(1枚目の写真)。「今日の相手はセント・ケニスだ。私立〔全国に2500校ある〕、最先端のスポーツ施設… そもそも、遺伝子が違う。以上はパット目にだが、現実はもっと厳しい。君らは、すぐ息切れするし、脚は丸ぽちゃだ。ほとんどが 思春期の成長前のチビ揃いときてる。だから、もう終わってるんだ」。話が終わるころには、選手全員の顔が曇っている。試合開始のコイン・トス。勝ったキャプテンは、「やったぞ。キャプテン健在だ」とブツブツ。そこに、その他全員で協議していたデニスが、代表で談判に来る。「ガレス、僕たち、ペナルティ・キックについて話し合ったんだけど…」。「キャプテンは俺だ。俺がやる」(2枚目の写真)。試合の最中、デニスが反則に合って転倒。ボールを持ってペナルティエリア内の目印に向かって行くと、キャプテンがボールを奪って自分で蹴る。ボールはゴールネットの遥か上を越えるお粗末さ。相手チームからも笑いが起きる。デニスとダーヴェッシュは、呆れて物も言えない(3枚目の写真、後ろの選手も笑っている)。それでも、試合は、デニスの活躍で勝利。試合中、何も見ていなかったコーチは、騒ぎを聞いて、「何が起きた?」。「勝ったよ」と教えられ、「ホントか?」。史上最低のコーチだ。
  
  
  

デニスが家に帰って、暗い部屋でぼんやりとTVを見ている父に、「パパ、勝ったよ!」と言っても、口先で「偉いぞ、よくやった」と言っただけで、目はすぐTVに。「で、ツリーを飾っちゃダメなの?」。「悪いな。今年はクリスマスはやらん。その気になれん」。「パパ、好きで “惨めになりたがってる” みたいだよ」。そこに入って来た兄は、「デニス!」と叱る。「そうじゃないか! 自分でルールを作ってるんだ… ママのことが忘れなれないって」。父は「そんなに簡単じゃないんだ!」と怒る。デニスも負けていない。「そんなルールなんか、破らなきゃ!」。そこで、父そっくりの体形で 役立たずの兄がバカな口を挟む。「よく言うぜ〔You can talk〕!」。「どこが?」。バカ兄は、父に向かって、「こいつ、ママの写真をマットレスの下に隠してる」と大切な秘密をバラしてしまう(1枚目の写真)。言った後で、自分の愚かさに気付いても、もう遅い。兄に輪をかけてダメ人間の父は、立ち上がると、「持ってこい」とデニスに命じる。デニスはマットレスの下から引き抜いてくると、渋々父に渡す(2枚目の写真、矢印は写真)。デニスは、裏切者の兄を睨むと、泣きながら家を出ていく(3枚目の写真)。向かった先はリサの家。泣いているデニスを見たリサは、「大丈夫?」と心配する。「もう一度、ドレスを着たいんだ」。「どうするの? ラジの店にまた行く?」。「違う。もっと大きなことがしたい。何かもっとクレイジーなことが」。「クレイジーって、どんな風に?」。「マジ、クレイジーな」。
  
  
  

そして、翌朝、鮮やかなドレスを着たデニスは、リサと一緒に正門をくぐり、校舎に向かって闊歩する。その派手な姿に、全員が足をとめて傍観する(1枚目の写真)。プライスは、ぎょっとして、「これ、誰?」とリサに訊く。「フランスの交換留学生です」。「Bonjour. Je m'appelle Denise(私の名前はデニースです)」(2枚目の写真)〔ドゥニーズの発音以外は、正しいフランス語になった〕。リサ:「パリから来ました」。「交換学生はマルセイユからだと思ってたけど」。「マルセイユのパリ通りからです」。「たとえそうでも、証明書がなければ、私が秘書である限り、この学校には入れませんよ」。「校長先生はご存じです」。最初の授業は、サッカーの役立たずコーチが教室に入って来る。リサから説明を受けると、「Bonjour」と言うが、「すぐに、それしか知らん」とあきらめ、外国人にも分かるようにと、ゆっくりとした大声で話し出す。「私は、ノリス先生だ。体育〔PE〕の教師だが、歴史もやらされてる。歴史には詳しいか?」。デニスが、「No」と言うと、「そうか。ならぴったりだ」と独り言。再び大声に戻り、「第一次世界大戦から始める。1914年だ」。その後、致命的な間違い。「時の首相はウィンストン・チャーチルだった」〔それは、第二次大戦の時〕。生徒達がおかしそうな顔をする〔「アホが またやらかした」といった感じ〕。最初の授業が終わり、廊下を歩いていると、一目惚れしたキャプテンが声をかけてくる。「サッカー部のキャプテンです」。デニス:「Je too enjoy le football〔「J'aime aussi le football」とでも言うべき。footballは英仏どちらでも同じなので、大幅に間違えている〕。この先は、あきらめて英語で話す。「ゴールは全部決めてるの?」。「もち、そうさ」。横にいたガールフレンドは、「そうよ。それが何か?」と訊く。ここで、デニスが復讐。「デニスって子から聞いたんだけど、ペナルティ・キック、全部外してるとか」(3枚目の写真)。「ノーノー、俺はスタープレイヤーだ。見に来いよ」。ガールフレンドは、嫉妬して、「来ちゃダメよ」と強く言い、下手な上に浮気っぽいキャプテンを連れ去る。
  
  
  

そのまま校舎の外に出たデニスは、女生徒に大モテで、携帯でツーショットを自撮りする子が続出。「サイコーの気分だね」とご機嫌だ(1枚目の写真)。その時、ダーヴェッシュ達4人で遊んでいたサッカー・ボールが転がってきたので、いつもの癖で、ボールを軽く止め(2枚目の写真、矢印)、もう一度軽く左に蹴って返す。しかし、その “さりげないが、見事な” ボールさばきを見たダーヴェッシュは、相手がどんな格好をしていようが、そんなことができるのはデニスしかないピンとくる。そこで、すぐ追いかけてきて「デニスか?」と訊く。「しーっ」。「そんなカッコで、いったい…」。「今日一日、他人になってる」。「頭 大丈夫か?」。「楽しいぞ」。「みんなに知られたら、楽しいどころじゃない。ここじゃ、生きていけなくなるぞ」。「見破ったのは君だけだ」。「今まではな。すぐ着替えろよ」。「落ち着け。うまくやるから」(3枚目の写真)。
  
  
  

次の授業は、フランス語。それに気付いたデニスはすぐに出ようとするが、教師とぶつかりそうになり、出られなくなる。教師は、見慣れない派手な服の女の子がいるので、「Et vous, qui êtes-vous(あなた、誰なの)?」と訊く。返事がないので、英語で、「誰なの?」と訊き直す。リサが、「デニースです。私のドイツのペンパルです、先生」と言うが、後ろの席の子が、「フランスって言ってなかった?」と言うので、「フランスのペンパル」と言い直す。それを聞いた教師は感激する。そして、ペラペラとフランス語をまくしたてる。「よく来たわね。私の授業に参加してもらえるなんて、何て嬉しいことでしょう。素敵だわ! いっぱい訊きたいことがあるわね。フランスのどの地域から来たの……」。デニスは、一言も分からない。リサは悲壮な顔をする。デニスは思い切った行動に出る。「今だけ、英語で話してもいいですか?」。「いいわよ」。「ごめんなさい。でも、私には、先生が言われたことがぜんぜん分かりません。フランス語の発音がとても下手なので」(2枚目の写真)。この言葉に、生徒達は笑い出し、教師はショックを受け、生徒達に背を向けて泣き出す。先生にひどいことをしたと思ったリサは、「ティッシュ、いりますか?」と尋ねる(3枚目の写真)。教師は、「大丈夫よ。何かが目に入ったの。しばらく外にいるわ」と言って教室を出て行く。すると、外から、凄まじい泣き声が聞こえてくるので、デニスの心は痛む。
  
  
  

授業が終わり、教室から出ると、リサはデニスを責める。「何であんなこと? ウィンザー先生は、一番まともな先生なのに、あんなに恥をかかせるなんて」。「なら、フランス語の授業があるって、先に言っといてよ」。その時、兄が秘書のプライスと一緒に階段を下りてくる。「どこにいるか知りません〔デニスのこと〕。今朝、僕より早く家を出たので」。「サボったのね」。「そんなのデニスらしくないから、心配なんです」。デニスとリサは掲示板にぴったりくっついて顔を隠す。2人がいなくなると、デニスは逃げるように食堂に入って行き、前を見ていなかったので、キャプテンに正面から抱き着くようにぶつかり、それを見たガールフレンドが、「こんなトコまで来て、あたしのボーイフレンドを盗む気?」と怒りをぶつける。「ガレスが、好きなハズないでしょ」。「この嘘つきのフランスの尻軽!」。2人は、取っ組み合いのケンカを始める(2枚目の写真)。すると、ガールフレンドの手がデニスの頭髪をつかむと、スポっと取れてしまう(3枚目の写真、矢印はカツラ)。それを見た全員が息を飲む。それは、すぐに笑い声に変わる。
  
  
  

そこに、「静粛に!」という鋭い声が響き、笑い声はたちどころに止む。現れたのは、校長と秘書。校長はデニスのドレスをギラギラした目で睨むと、「ドレスなんか着おって」と脅すように言う(1枚目の写真)。リサは、「先生、彼のせいじゃありません」と庇おうとするが、「『静粛に』と言ったはずだ」と警告。デニスの目の前まで近づくと、「説明してくれるかな?」と、不気味なほど丁寧に訊く。「なぜ、ドレスを着て学校に来た?」。「分かりません」。「『分かりません』だと? デニス・シムズ、君は当校の恥だ。ま、家族が壊れておれば、当たり前かもしれんがな。退学に処す」。生徒達は、再び息を飲む。デニス:「でも、先生…」。「『でも』など、ない」。「お願いです。僕の友達を負けさせたくありません。土曜に決勝戦があります」。「デニス・シムズ、君は土曜に試合などせん。他の日にもな。もう、この学校の生徒ではないからだ。直ちに退去せよ」(2枚目の写真)。厳しい処分に、生徒達は身動き一つしない。夜。自宅で。父は、「退学?! ドレスを着てたから?!」と、息子を糾弾する。デニスは、「カツラも」と言い、しばらくして「そうだ、イヤリングも」と付け加える。「俺は、お前たちを男に育てたと思ってた。失敗だったな」(3枚目の写真)。兄は、「俺はドレスなんか着ないから、失敗は半分だけだろ?」とバカなことを言い出し、父から睨まれる。「なぜだ? それが知りたい」。「幸せな気分になれたから」。「部屋に行って、宿題をしてこい」。「退学になったんだよ。宿題なんかない」。「なら、部屋に行け」。その夜、心配したダーヴェッシュが会いに来たが、父は、目の前でドアを閉ざす。リサがメールを送ってくる。「そっちに行こうか?」。「パパが、誰も家に入れない」。「ごめん」。「君のせいじゃない」。「ホーソーン〔校長〕の考えを変えさせる」。「どうやって?」。「分からない…」。
  
  
  

そして、いよいよ決勝戦の日。大会の参加者は、16歳以下が対象なのだが、相手チームの選手があまりに大人びているのを見たジャスプリートは、一緒にいるリサに、「彼らが16歳以下と言うんなら、私は若い頃のアンジェリーナ・ジョリーね」と言う。心配になったリサは、校長の姿を見つけると、「ホーソーン先生、デニスのことで お話があります」と話しかけるが、「リサ・ジェイムズ、私は君の抗弁に興味はない」と、取り付く島もない(1枚目の写真)。「でも、先生…」。「あと一言で、君も退学だ」。リサは、それ以上何も言えずに引き下がる。サイテーのコーチ・ノリスの “試合前の言葉”。「遂に ここまで来た。決勝戦だ」。選手達は歓声を上げる。ノリスは、「まあまあ…」と、それを鎮める。「君達が、どうやってここまで来たか、思い出して欲しい。幸運… それに、ドレスを着て追放された向こう見ずのお陰だ。対戦相手は、3年連続優勝している。正直に言おう、奴らのプレイは汚い。無理に割り込み、平気で顔を殴る。あそこにいるのが君達で、私じゃないことは幸いだ。一つ覚えておいて欲しい。勝っても負けても、君らはとにかく決勝戦に出たんだ。それは、私の履歴書〔CV〕を輝かせる」。この最後の言葉で、士気はゼロに。一方、デニスは、父の厳しい命令で、自宅監禁状態。試合の開始前、選手たちが一列に並び、能天気な審判が入ってくる(2枚目の写真、点線は、2つのチームの身長差を示している。年長なのでキャプテンになっているガレスだけが、何とか同じ敵と身長で、後は頭1つ分背が低い)。試合が始まり、すぐに「0:1」。ダーヴェッシュは、ガレスに、「デニスがいなきゃ、僕らにチャンスはない」と言うが、ガレスは、「黙れ、あいつなんか要らん」と強がる。その先も、相手チームは反則をくり返し、能天気な審判はレッドカードを出しもしない。得点は「0:3」。たまりかねたダーヴェッシュは、再度ガレスに、「これじゃ完敗だ。キャプテンなんだろ、何とかしろよ」と抗議する。自分には何もできないガレスは、校長のところまで走って行く。校長は、開口一番、「君らは、我が校を恥にさらしとるぞ」と叱る。「デニスが要ります。ベストプレイヤーです」(3枚目の写真)。「女装した異端者が我が校の代表になることは許さん!」。「でも、必要なんです!」。「戻ってプレイしろ!」。前半は「0:4」で終了する。
  
  
  

自宅謹慎中のデニスの携帯に、リサからメールが入る。「いいこと思いついた!」(1枚目の写真)。試合会場では、ハーフタイムが終わっても、なかなか控室の扉からデニスの学校の選手たちが現れない。試合放棄かと思われた時、ロックバンド、「クイーン」の『I Want to Break Free(自由への旅立ち)』の曲と共に、白煙の中から、ドレスを着たキャプテン・ガレスとダーヴェッシュが現れる(2枚目の写真)。それに続く選手も全員がドレス姿。校長は、それを見て凍りつく。最後に登場したのは、真っ赤なドレスを着たデニス(3枚目の写真)。校長は、ガレスを呼びつける。「そのざまは、何のつもりだ?」。ガレスは、「先生は、ドレスを着たからデニスを退校にしました。でも、僕ら全員を退校にはできません」と言い、返事を待たずに試合に向かう。
  
  
  

この映画は、完全なコメディなので、後半戦はデニスの完全な一人試合。見事な足業で相手を混乱させ(1枚目の写真)、ゴールを決め(2枚目の写真)、「4:4」の同点となった後のペナルティ・キックも(3枚目の写真)、ガレスと違ってゴール右サイドネットに鋭く突き刺さる。デニスが登場したのを見たジャスプリートは、閉じ籠り魔の父親を試合会場まで無理やりに連れてきていたが、ドレスを着た息子の超絶テクを見て感激。ペナルティ・キックを決めて逆転した時には、デニスの兄と一緒に万歳(4枚目の写真)。
  
  
  
  

ここで、ホイッスルが鳴り、試合終了。選手たちは、女の子のように膝を曲げて挨拶する(1枚目の写真)。この段階で、サイテーのコーチ・ノリスは、「勝ったのか?」と世迷い言。勝ったと分かると、「そうだ! やれると分かってた!」と、これまた前言とは真逆の自分勝手な発言。選手たちは、勝利に導いたデニスを肩にかつぐ(2枚目の写真)。それを見ていた、スカウトは、「あの子にサインさせろ」と部下に命じる。父とデニスは抱き合う。父は、「これは俺の息子だ」と自慢し、兄も、「これは僕の弟だ」と追随する。父は、さらに、「口では言えないほど〔more than I can ever say〕 愛している」とも(3枚目の写真)。
  
  
  

ダーヴェッシュが優勝カップをデニスに渡そうとすると、それを横から校長が奪い取る。「君には関係ない。当校の生徒ではないからな」。「でも、僕…」。「『でも』も、『僕』もない。直ちに競技場から退去しろ」。父は、「俺のデニスがいなきゃ、カップはもらえなかったんだぞ」と言うが、校長は、「あなたの息子は、ドレスを着て学校に来た。ぞっとする」と、吐き捨てるように言う(1枚目の写真)〔この箇所の台詞には抵抗を感じる。資格外の選手による得点は無効で、デニスが選手でないと分かれば、カップは剥奪される。だから、父は、「俺のデニスを拒否すれば、カップは剥奪されるんだぞ」と言うのが筋だ。しかし、映画では、この後さらに “バカバカしいほどコミカルな決着” を用意しているので、こうした展開を避けている。それでも、不自然であることに変わりはない〕。試合後、リサとデニスがラジの店の前を通りかかる。リサ:「新しい学校、見つけた?」。「まだだよ。寂しくなるね」。「私もよ」。そこまで会話が進んだところで、リサは、「中に入ろ。新しい『ヴォーク』の出る日よ。1冊プレゼントする」と言い出す。中では、店主がデニスの退学を残念がり、「何とか校長を説得する方法を見つけられればなぁ」と言う。「全部試したわ」と言うリサに対し、店主は「妹さんに話したら」と勧める。デニス:「妹だって?」。「そうだよ。毎週日曜、朝一番に新聞を買いに来るんだ。彼女に、仲介を頼んだらどうかな」。「やってみる価値ありそうね」(2枚目の写真)。
  
  

翌朝、2人は、ラジの店が開く前から待機している。すると、背の高い女性が自転車に乗ってくるのが見える。リサ:「あの人だと思う?」。「きっとそうだよ。背がすごく高いもん」。「大きな足ね」。「ひょっとして…」。デニスは、女性に向かって、「ホーソーン先生!」と呼びかける(1枚目の写真)。「兄のことを言ってるのね? 彼なら、トーストと卵で楽しく朝食中よ」。声は校長そのものだ。リサ:「先生だわ」。「子供達、私はハリエット・ホーソーンですよ。初めてお目にかかるわね」。デニス:「先生だって バレてるよ」。あきらめた校長は、「そうだ。私はホーソーン先生だ。それがどうかしたか?」と開き直る。リサは、「でも… 先生… ドレス着てる」と呆れる。校長は、「失礼な!? これはブラウスとスカートだぞ!」と詭弁。デニス:「確かに、ブラウスとスカートだよね!」。「いいか、校長はストレスの多い仕事なんだ。リラックスできる時間が必要なんだ」。「僕だって、退学にされるまで、ドレスで楽しんでたよ」。「君は、校則を破ったんだ。状況は全く違う」。リサ:「じゃあ、私が学校中の生徒にこのこと話したら、みんなもきっとそう思うわね」。「私を脅迫する気か?」。デニス:「いいえ」。リサ:「そうよ」。それを聞いて、デニスは、「ごめん、そうだよ」と言い直す(2枚目の写真)。
  
  

月曜の朝、デニスとリサは並んで校門を入る。いつもと違い、リサは、ストライプ入りの洒落た上着を着ている。秘書のプライスは、リサの服よりもデニスを先に咎める。「デニス・シモンズ、ここで何をしているのです?」。その後で、リサの服装を、「何て醜悪な」と批判する。リサは、「これ制服ですよ。ちょっと手を加えただけだわ」と反論する(1枚目の写真、デニスの小バカにしたような顔が面白い)。「長年見てきましたが、こんなひどい服装をみたことは…」。その言葉を遮り、校長が「何と創造的な。さあ、どうぞ」と満面の笑顔で言う(2枚目の写真)。校舎内に入って行ったデニス。ばったり会ったダーヴェッシュは、「戻ったのか?」と驚く。「うん」。「ホーソーンは?」。「僕の考え方に賛成したのさ」。すると、フランス語の教師がやって来る。「先生」。「戻ったのね」。「フランス語の発音について あんなこと言ってごめんなさい。先生の発音、フランス人の誰よりもきれいなのに…」。「ホントにそう思うの? Merci beaucoup(どうもありがとう)、デニス。正直言って、あなたのドレス姿、決まってたわ。Très à la mode(とってもおしゃれ)」。「ありがとう」。「春休みの演劇の台本を書いているんだけど、あなたにぴったりの役があるの。劇は『ジャンヌ・ダルク』よ。どの役かは分かるわよね?」。「ジャンヌ?」。「Correctement(その通り)。ジャンヌは、男の子の服を着た女の子だったでしょ。だから、あなたは、男の子になったり、女の子になったりするわけ」。「そうですね…」(3枚目の写真)。「Très bien(大変結構)。ところで、劇は全部フランス語ですからね」〔フランス語の不得意なデニスにとって、断トツの主役を全部フランス語で演じるのは不可能に近い重責〕
  
  
  

ラストシーンは、クリスマス。父は、きれいにツリーを飾り、デニスから奪った母の写真を返す(1枚目の写真、矢印)。「悪かった。俺も、彼女がいなくなって寂しい」。デニスは父に抱き着く。抱擁を解いた後、父は、「ジョン、まさか全部食べてないだろうな?」と訊く。「何でダメなの?」。「クリスマスのささやかなパーティに、お客さんが来るだろ」。デニス:「誰?」。「ただの友達さ」。ドアがノックされ、そこに顔を見せたのは ジャスプリートとダーヴェッシュの母子(2枚目の写真)。あらすじではカットしてきたが、このジャスプリートは、デニスの父に気があるようで、ひょっとしたら、デニスとダーヴェッシュは兄弟になるのかもしれない。映画の最後は、冒頭と同じ。デニスが、クリスマスイルミで飾られた家から出てきて、独白。「僕はデニス。普通の町の、普通の通りの、普通の家に住んでる。でも、僕は、ちょっと変わってる」。そして、こう付け加える。「でも、誰でもそうじゃない?」(3枚目の写真)。
  
  
  

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